能
室町時代に観阿弥、世阿弥父子によって大成された能は、多くの戦国武将に愛され、六百年を経た現代でも幽玄の世界へ観る人を誘います。江戸時代には、武士道の精神を養うため、武士の芸能となり、平成13年には、ユネスコ無形文化遺産に認定されるなど、今は国際的にも高く評価されています。
謡の十五徳
一、行かずして名所を知る
二、旅にありて知音を知る
三、学ばずして古事を知る
四、習わずして歌道を知る
五、詠まずして月花を望む
六、友なくして閑居を慰む
七、望まずして高位と交わる
八、意わずして養生にかなう
九、薬なくしてうっ気を散ず
十、契らずして美人を懐かしむ
十一、馴まずして武芸に近づく
十二、戦わずして戦場を知る
十三、祈らずして神徳を知る
十四、触れずして仏道を得る
十五、学ばずして道義を解す
和みの継承
日本の代表的伝統文化、古典芸能として能の完成度を高めた世阿弥。能は江戸時代に国家指定芸能となり、演劇として現代人に親しまれるよう伝承してきました。
諸人の心を和ます能の秘めた魅力に惹かれて、私は能楽師になりました。
長年能楽師として活動する私自身をはじめ、お弟子さんや、周囲の人たちが能楽に触れることで、安らぎと癒やしを享受し、心身ともに日常の健康を保ち、生きる力を育んでいる姿、そのものを目の当たりにしています。
世阿弥が説いた「人の心を和らげ寿福を増長する」との一説を、現実のものとして、理解するにいたりました。
能の鑑賞そのものは、とても敷居の高いものと思われていますが、鑑賞のみならず身近に実践、体感することで、健康維持をもたらすことから、「健康」と「能楽」の位置づけとして広くみなさまにお伝えする、そのような活動を始めて、五年目になります。